ドルトムント × マラガ 12-13 CL Quarter Final 2nd leg
前回の記事の2試合目
この対決の行く末が気になりこの試合を選びました。
結果としては2戦合計3-2でドルトムントが勝ち上がり。
前半1-1で、後半82分にマラガ逆転。
アウェーゴールにより、あと10分で2点な場面で、ロスタイムに2点入れると言う
近年のCLトップクラスのストーリーを描きあげる。
このブログで注目していくのは。
1st legでドルトムントが圧倒した内容だったのに、エンターテイメントとしては最高だがドルトムントにとって心臓に悪い試合展開になった。
その理由となる、マラガの戦術と、それに対してのドルトムントの戦術について。
コンパクトであることの重要性
1st legでは守備に重きを置いていない設計だったマラガ。
その部分では前回の記事で触れた通り。
今回は特にリトリートの場面で緻密に組むことで、ドルトムントを苦しめた。
ブロックの密度(コンパクト)と守備ブロックの初期設定位置が大きく変わった部分。
1st legと比較すると、FWとSHの距離が、DFラインとダブルボランチに近づきフィールドプレイヤー全員が守備で協力できる距離感。
前回の攻撃陣と守備陣が別れたようなものとは真逆の設計。
守備ブロックの位置は、FWがドルトムントエリア3からDFラインがマラガエリア2
と、かなり高い位置に守備ブロックを組む。
SHは前回同様スタートポジションがボランチの横に位置していないが、そもそもコンパクトさと、守備ブロックの位置が違うので、デスコルガードとは違うと考えていいでしょう。
FWは役割はドルトムントのボランチ(特にギュンドガン)へのパスを遮断とプレス、味方ボランチの前でボールを持ったら、プレスバックを行い、余裕(時間)を与えず、効果的なプレーをさせない。
ベンダー、ギュンドガンがCBの横やSBのエリア(元々シュメルツァーや、ピスチェクがいた場所)に移動しても、味方SHのポジショニングや、状況を見ながら受け渡したり、自分で行ったりケースバイケースで見ていた。
CBには適度にプレッシャーをかけていたが、あくまでボランチを気にしながら。
最優先はボランチの対応。
マラガは更に、中盤の真ん中(4-4-2の4と2の間)ではボランチもベンダー、ギュンドガンの対応出てくるのでFWのプレスバックとで挟みこむ。
ボランチを経由してビルドアップできないドルトムントは、唯一ほとんどプレッシャーの来ないCBから直接アタッカー(SH、FW)に縦パスを送るも、SHにはSB、FWにはCBが厳しいマークしている為(少しポジションを下げてもそのままついていた)バックパスぐらいしかできない。
これによって、マラガはボランチ絡みのミスでショートカウンターを数回繰り出すことが出来た。
受け手にも出し手にも余裕を与えないマラガの守備でドルトムントはビルドアップをすることも困難な立ち上がりとなった。
受け手にも出し手にも余裕だらけだった前回とは大きく違うところ。
ドルトムントのディフェンスは相変わらずのクオリティーでマラガのポゼッションにも、ポジトラにも組織的な堅い守備を見せていた。
マラガは攻撃面では1st legとほとんど変わらない。
J・バプチスタが中盤に降りて体を張り、ポストプレーをして押し上げるプレーが効果的だった。
球離れを速くしたり、パターンを1つ持っていてそれを使って前回の試合よりは、崩す場面が増えたが、最後のシーンではやらせなかった。
マラガはビルドアップが成功すると、SBをあげて攻撃するので、ドルトムントはカウンターSBの裏を使い、アタッキングサードまで持っていくシーンを少し作ることが出来た。
15分以降からはドルトムントがマラガのリトリートに対して対応する。
CBやSBが時間のある状況でボールを持っているとき、アタッカーの選手が中盤に降りてきて、ボランチの視野にあえて入ってから、スペースにスプリントする。
そうすることで、ボランチはついて行き、スペースを空ける。
そのスペースをギュンドガンが使い、アタッキングサードに侵入したり、バイタルに縦パスを入れるようになる。
流石にここまで深い位置だと、FWのプレスバックが遅れる。
少し後には、レバンドフスキにCBと競らせるロングボールを使いセカンドボールを拾ういわゆるダイレクトプレー。
マラガの堅いディフェンスを浮き球で回避する戦術を採った。
その数分後の24分マラガのカウンターからホアキンの先制点が生まれる。
先制点以降のドルトムントは、先ほど書いた、ボールを持っている時はロングボール、セカンドボールに加えて、プレスの開始位置を高くし、更にプレスの強度を強め試合のテンポを上げて偶発的な場面を増やす。
セカンドボールやトランジションなどの偶発的な場面はどんな状況でも組織的なディフェンスが出来るドルトムントの長所。
その回数を増やす采配を決断したクロップ。
39分にレバンドフスキの同点ゴールで前半終了。
しっかり修正を加えてきたペジェグリーニ。
やっとCLらしい試合になった。
1st legのディフェンスはなんだったのだろうか。
守備を犠牲にしてまでカウンターの威力の強化の為に行ったデスコルガード。
2nd legは高い位置に守備を設定し、フィールドプレイヤーが10人守備に参加した状態で、高い位置からカウンターを繰り出すことに成功。
攻守両立する戦術を設計した。
まさに、いい守備からいい攻撃が生まれる。
ドルトムントからしたら、1st legで試合を決めれなかったのが痛すぎる。
ただ、試合内容はイーブンなので悲観する必要は全くない。
後半
マラガの修正点は、SBの攻撃参加がほぼなくなったことと、後半途中からミドルシュートを増やし攻撃を完結させてカウンターを受けないようにリスクマネジメント。
ドルトムントはポゼッションでひと工夫。
おそらくマラガが要注意人物と認識されてるであろうギュンドガンがいい意味で曖昧なポジションを取る。
フリーで受けたシュメルツァーがドリブルでアタッキングサードまで運ぶまたは、攻撃の起点になり、縦パスを入れる。
ロングボール攻撃では、レバンドフスキにロングパスを送ったと同時にDFラインの裏にスプリントし、ヘディングのそらしを受ける動きや、セカンドボールを拾い前を向いたら、複数の選手が足元でもらうのではなく、裏に走ったり、スペースに走ったり、それによって出来たスペースを使うようになり、オフザボールが多くなり、連動するようになった。
ロングボールの起点づくりとしてピスチェクがサイドの高い位置に上がり、アントゥネスを狙う。
身長10cm差のマッチアップを選びロングボールの成功率を上げる。
後半立ち上がりはドルトムントペースで進み、少し経つとオープンな展開とセットプレーが多くなる。
オープンな展開になってからは、ややドルトムントペース。
セットプレーではマラガに得点の気配があった。
71分ドルトムント ブラシチコフスキ→シーバー
ベンダー→シャヒン
73分マラガ ドゥダ→エリゼウ
この交代でシステムはこうなった。
ゲッツェとレバンドフスキが中盤や最終ライン付近に降りてきてサポートすることが多かったので、中盤表記にしたがレバンドフスキは最前線にいることも多かった。
ここからは戦術はほとんどなくロングボールやアドリブのコンビネーション。
お互いがゴール前を行き来する展開で決定機の量はドルトムントの方が多かった。
しかし、81分にマラガのエリゼウが逆転ゴールを決める。
スボティッチ、フンメルス、シャヒンを後ろに残して空中戦モンスターのサンタナを前線に上げ絵に書いたようなパワープレー。
そして、4分間のロスタイムで2得点。
劇的な逆転でホイッスル。
スタッフ含め全員ピッチに飛び出し、サポーター全員が雄叫びをあげ続ける。
ジグナル・イドゥナ・パルクが熱狂の坩堝と化した。
あとがき
戦術の設計って大事だね。ってことの証明のような2試合。
チームの力を最大限に出す為には、攻撃も守備も全員で行うべきで、それを監督が、選手の個性と照らし合わせて組み合わせチームの戦術を決めて意思統一することが必要。
個人のポテンシャル、モチベーションだけではなく、それをまとめて組織の最大公約数にする為のツールとして、戦術の意味のひとつであると再確認した試合だった。